ヘミングウェイやフィッツジェラルドなど20世紀を代表する作家をまだ無名だった頃に見出した伝説の編集者がいました。
「グレート・ギャッツビー」「老人と海」など今も読み継がれている名作を世に送り出した編集者マックス・パーキンズと、同じく彼に見出され20世紀を代表する作家となったトマス・ウルフの物語。
Contents
『ベストセラー 編集者パーキンズに捧ぐ』
監督・出演・製作 基本情報
監督:マイケル・グランデージ
出演:コリン・ファース/ジュード・ロウ/ローラ・リニー/ニコール・キッドマン
製作:2016年/イギリス・アメリカ
ヘミングウェイは辛うじて、何作か読んだことがあるものの、フィッツジェラルドは大昔に挫折しました。トマス・ウルフは名前だけ…。
その程度の知識でも問題なく観られました(*’-‘)b OK!
▼原作があります。
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ざっとあらすじなど。
ヘミングウェイ、フィッツジェラルドを見出したカリスマ編集者パーキンズの元にある原稿が持ち込まれる。
帰宅する電車の中でその原稿を読み始めると、パーキンズは一気に引き込まれ、時間を忘れて読みふけることになった。その作品を書いた人物こそが、今はまだ無名だが、のちに20世紀初頭のアメリカを代表する人気作家になるトマス・ウルフだった。
すぐにトムを出版社に呼び出す。
ニューヨーク中の編集者から断られ、パーキンズにも断られると思っていたトムだったが、「うちで出版します。」パーキンズの一言で出版が決まる。
こうして出会った二人は激しくぶつかり合いながらも共同して作品を作り上げて、トムはその才能を認められていくことになる。
以下は完全にネタバレしています。
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感想(ネタバレあり)
天才肌の作家と名物編集者
http://eiga.com/movie/83689/gallery/2/
トムはいかにも天才肌で、はっきり言って変人。
声は大きいし思ったことを思った時に思ったようにオブラートにいっさい包むことなく口にする。だから人を傷つける。父親と不仲で、故郷から逃げるように出てきて、友人もいなかったらしい。
はっきりいって、私もあまり好きじゃない(≧ヘ≦) ムゥ←パーキンズの奥さんに対する態度とか、感じ悪すぎ!
トムには18歳年上の恋人、ステージデザイナーのアリーンがいる。アリーンは既婚者であるにも関わらず、夫と子を捨てトムの生活の一切の面倒を見てきた。ようするにトムはヒモ…なんです。パーキンズの元に原稿を持ちこんだのもアリーンの伝手でした。
妻曰く「ずっと息子が欲しがってた。」というパーキンズは、時に父親のように、編集者として友人として、トムに寄り添ってゆく。
ただ「父と息子」というにはやや無理がありましたね。トムは父親と不仲であるせいもあり、父を求める気持ちが大きく、作品のテーマも「父親」。
しかしジュード・ロウとコリン・ファースは親子には見えないのですよ…。実際のトムはこの頃はまだ20代だったので、もう少し若い俳優を当てた方がよかったのかも。
ジュード・ロウは良い俳優なのですが、20代の若手作家を演じるには違和感があり、すっかり寂しくなった頭髪が気になってしまいました…(・_・)ヾ(^o^;) オイオイ
パーキンズは見事なほどの仕事人間、完璧なワーカホリック!
会社でも、通勤電車の中でも、自宅でパジャマ姿に着替えても、原稿をチェックしている。しかも決して帽子を脱がない。パジャマ姿に帽子かぶってる姿になんだかほっこりする(*´∇`*)
実際のパーキンズもそうであったらしい。帽子をかぶっている=仕事モードってことなのかな。
仕事人間だけれども良識と思いやりがあり、作品が売れず困窮する作家を自腹で援助してあげる優しさも持ち合わせてる…。フィッツジェラルドやヘミングウェイは有名になった後も、パーキンズに深い信頼を寄せている様子。
荒々しいトムの原稿にパーキンズは容赦なくダメ出しをして、不要な文章はばっさりと切り捨ててゆく。編集者と作家の共同作業は苦しい作業ではあるものの、二人はとても楽しそうに見えた。
まだ「原石」でしかないトムの才能がパーキンズによって磨かれ、トムの原稿は人々を魅了する輝きを放つ作品へと仕上がり、処女作「天使よ故郷を見よ」はベストセラーに。トムは一躍人気作家になります。
http://eiga.com/movie/83689/gallery/4/
成功をともに喜び合う二人の深い信頼と友情に結ばれた関係は、素直に素敵だなって思いました。
トムの創作意欲は衰えることもなく、すぐに新作に取り掛かり、完成した作品はなんと5000枚!しかも、清書もされていない手書きの状態。
昔って大変オオーw(*゚o゚*)w
何人ものタイピストたちが総がかりで原稿をタイプしてゆく。そのはたから原稿に次々に修正が入ってゆく。それをまたすぐにタイプ。その繰り返し。
毎晩毎晩二人は作品に向かい合いますが、不要と思われる部分を削っても削っても、トムが書き足してしまうので(笑)軽く2年を経過しても編集作業が終わらないという状況ヤレヤレ ┐(´ー`)┌ マイッタネしかしその苦労もあって、生まれた作品「時と川の」もまたしてもベストセラーに。
数々の作家を見出してきたパーキンズに、「人生で一人出会えるかどうかの作家」を言わしめたトムは、確実に世間にその名を知らしめて行きます。
変わっていく関係と変わらないもの
しかし、ずっと続くかに見えた二人の関係も少しずつずれ始める。
トムは才能に恵まれているけれど私生活では近づきたくないタイプ。成功をおさめると傲慢さと身勝手さは目に余るように…。
本当のことであっても、言ってはいけないこともある。優しい嘘が必要なこともある。それがわからない。必要ないと思っている。自分がしたいように振る舞っては、人は離れていくばかり。
自分の成功がパーキンズの手柄のように評価されることもトムの苛立たせ、一人でも書けることを証明したいとパーキンズの元を去ることになる。
二人の関係は決裂したかに見えましたが、それでも二人の間には変わらぬ深いきずながありました。
http://eiga.com/movie/83689/gallery/5/
病で倒れたトムから、死後にオフィスに届いた手紙。
複数の郵便物の中からトムの筆跡で書かれた宛名書きを見つけた瞬間に、パーキンズの手が止まる。
さんざん原稿を見て来たから、一目でそれが誰の字かわかるんですね。
オフィスの扉を閉め、しばし手紙を見つめた後、意を決したように開封して読み始めたその手紙には、トムの素直なパーキンズへの感謝の想いが記されていました。
決して帽子を脱がない男が、思わず帽子を脱いでしまうほど、その手紙はパーキンズの心を揺さぶりました。このラストシーンのパーキンズの表情がねとてもいいんです。劇場でもすすり泣きが聞こえてましたよ。
フィッツジェラルドも若くに亡くなってしまうし、ヘミングウェイも最後は自ら命を絶ってしまいます。
天才って、やっぱり生き急いでしまうものなんだなぁ、としみじみと思いました。
普通の人には見えないものを見て、聞こえない音を聞き、研ぎ澄まされた感性がキャッチしたものが自分自身に跳ね返ってきて、自分を痛めてしまうのだろうかね。
http://eiga.com/movie/83689/gallery/3/
トムの恋人アリーンを演じたのはニコール・キッドマン。
さんざん尽くしてきたのに、売れたとたんに捨てられるという…。
パーキンズに嫉妬したりトムの眼の前で自殺未遂をしたり、銃を持ってオフィスにやってきたりと、なかなか激しい気性の持ち主。
本が売れて経済的にも余裕ができると、アリーンが疎ましくなるのもわかるんだけれど、さすがに追い詰められたアリーンは気の毒だったわ(≧ヘ≦) ムゥ
別れるのは仕方ないとしても、もう少し誠意を持って接してあげればいいのにって思いました。アリーンを甘く見ていたんだろうね。だから自分勝手な捨て方をしておいて、寂しくなったらまた寄り添おうとする。なんでも受け入れてくれると思っていたんだろう。勝手(`Д´) ムキー!
芸術家はそんなものとか、芸の肥やしとか、色々ありますが傷つけられた方にしたら、たまったものじゃないと思うの。
ニコール・キッドマンはいかにも美人っていう役ばかり演じてるイメージだったけど、こういう惨めな女性の役もやるんだなってちょっと意外でした。
最近だと『ライオン』のママ役が素敵だった。オスカーにノミネートもされましたし。
女優として、違うステージに移行した感じがあるなぁ。
▼ニコール・キッドマンが愛に溢れる母親を演じています。
『LION ライオン 25年目のただいま』/グーグルアースがもたらした奇跡の再会。実話を元にしたウソみたいな本当のお話。
▼コリン・ファースと夫婦を演じたことも。
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その他気になったこと。
フィッツジェラルドに教えてあげたい。
フィッツジェラルドは評論家には高く評価されたのですが、生前はそれほど本は売れなかったらしいんですね。売れたのは死後。
生前は出版した本の印税はわずかで、絶版になったりしているのです。奥さんは精神を病んでしまい、妻の治療費と生活費を稼ぐために短編ばかり執筆していたらしいです。
それで、あのトムの発言になるんですね…。長編を書きたくても、じっくり創作に取り組める状態でもなかったようです。
フィッツジェラルドに教えてあげたい。
あなたが全く売れないと嘆いていた「グレート・ギャツビー」は何度も映画になったんですよって。
▼レオナルド・ディカプリオ版
▼ロバート・レッドフォード版
▼フィッツジェラルド作。
以上、『ベストセラー 編集者パーキンズに捧ぐ』の感想でした。
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