はじめて観たのは10年以上前なので、細かなストーリーはほぼ忘れてました。Netflixにて鑑賞。
遠い記憶の中で、とても好みの作品だったこと、幸せで切ないラストだったことは覚えていましたが、二度目の鑑賞でも、やはりすきな作品だと思った。
加えて、最初に観た時は気付かなかった、新たな発見もありました。
意外な人がね、出演してるんですよ!しかも複数!
また、今までのこの作品に対する認識=タイムスリップもの、という認識が実はそうじゃないのでは…?と思ったり…。改めてこの作品が好きになりましたよ。世間の評価は辛口ですが、私の評価は大甘です^^
いいんだ、キミが笑顔でいてさえくれれば…。自分よりも愛する人の幸せを願う…そんな男の生き様が私のツボなのです。
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『ジャケット』
監督・出演・製作 基本情報
監督:ジョン・メイバリー
出演:エイドリアン・ブロディ/キーラ・ナイトレイ/ジェニファー・ジェーソン・リー
製作:2005年/アメリカ
主演は『戦場のピアニスト』のエイドリアン・ブロディ。ヒロインはキーラ・ナイトレイです。
あらすじ
湾岸戦争で頭部を負傷し、記憶障害を患ったジャック・スタークス。
帰国後、身に覚えのない殺人事件の罪を着せられ、精神病院に収容されたジャックは非人間的な矯正治療を受けさせられるのだが、その治療中、気がついた時にはまったく違う場所にいた。そこは2007年。15年の時を飛び越えてしまったのだ。
参考>>>>タイムループ、タイムスリップをテーマにした映画14選。アクションから恋愛映画まで。
感想(ネタバレあり)
本作の見どころは…
- 困り顔のエイドリアン・ブロディ
- 意外なところに意外な役者が出演してる。(しかも複数。)
- 解釈が分かれる切ないラストシーン
でしょうか。
困り顔で優しげなエイドリアン・ブロディ
エイドリアン・ブロディと言えば、生まれながらの”困り顔”というか、下がり気味の眉と目が、印象的な顔立ちをしています。困っているような、それでいて微笑んでいるような…不思議な存在感がありますよね。
本作でもヒドい目に合わされて常に困惑顔です。でもね、やっぱりとっても優しい男なんです。
1992年、湾岸戦争。
戦闘に巻き込まれ怯える少年に優しく手を伸ばそうとしたとき、ジャック・スタークスはその少年に頭部を撃たれてしまう。最初のシーンから「あぁ優しい男なんだな」と思った。(ま、その優しさが裏目に出るんですが。)
命は取り留め帰国したものの、重度の記憶障害を患ったジャックは家族もおらず、行くあてもない。彷徨い歩いていると、雪の中、車が動かず立ち往生している一組の母娘に出会う。
母は酩酊状態、途方に暮れる幼い少女に声をかけ車を修理してあげたジャックは、自分の認識票を欲しがる少女・ジャッキーにそれを渡す。つかのまの触れ合いの時間。しかし、泥酔状態の母親ジーンに変質者扱いされて追い払われてしまう。(←ひどい!)
その後、ヒッチハイクしてカナダ国境まで乗せていったもらうことになったのですが、乗せてくれた男がヤバイ人物で、いきなり逆上して警官を射殺…。
ジャックはこの警官殺しの罪をなすりつけられてしまうわけですが。
ここで驚きポイントその1。
このヤバイ人物を演じているのがブラッド・レンフロ。
初回では全く気づかなかったのです。今回はブラッド・レンフロだと事前に知っていたため、じっくり見てみましたが、「言われてみればそうかも…。」というレベル。子役の頃の輝きは、失われつつありました…。
そして、ブラッド・レンフロは、もうこの世にはいません。
時を超える。
ジャックは身に覚えのない罪に問われ、心身喪失で無罪になったものの、犯罪者用の精神病院に収容されてしまう。そこで彼は矯正治療を受けることになるのですが、
これが拘束衣=ジャケットを着せて狭い「引き出し」の中に閉じ込めるという非人道的なもの。
ちなみにここで「引き出し」と呼ばれているのは、サスペンスドラマにもよく登場する遺体の保管庫みたいなヤツ。狭くて真っ暗…。この治療により暴力性が失われる、というトンデモ理屈。
暗闇に閉じ込められたジャックの脳裏には過去の様々なシーンがフラッシュバックし、気がつけば見知らぬ土地に佇んでいた。
勤めを終えて店から出てきた若いウェイトレスが、ジャックに声をかける。彼女はクリスマスイヴの深夜にコートも着ていないジャックを放っておけずに車に乗せ、自宅に連れ帰る。
▼ちょっと荒んだ感じのウェイトレス、演じるのはキーラ・ナイトレイ
クリスマスイヴにたった一人。少々やさぐれて荒んだ雰囲気漂わせる彼女。ジャックは女性が風呂に入っている間に残り物で料理を作り、二人は束の間の優しい時間を過ごすが、ここで急展開。
ジャックはそこで信じられないものを見てしまう。
それはかつて出会った親子の写真と、幼い少女にあげたはずの認識票。
どうして彼女がこれを持っているのか…?ジャックは問い質す。
すると、今は2007年で、彼女こそがあの幼い少女ジャッキーであり、そして認識票をくれたジャック・スタークは1993年に死んでいるという衝撃の事実が発覚。
良くなるどころか絶対に病気が悪化すると思われる極悪な矯正治療法なのですが、これが瓢箪から駒というか、棚からボタモチといううか、怪我の功名というか…。タイムスリップという予期せぬ効果があったのです…。
ジャックは未来を行き来しながら、自分がなぜ死んだのか?ジャッキーと協力してその真相に知るための調査を始め、ジャッキーとの間に愛が芽生えてく。
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ジャッキーがなぜジャックを家に連れ帰ったのか?
若い娘があまりにも無防備に思えましたが、それはかつて幼い自分に優しくしてくれたお兄さんの面影をなんとなく覚えていたのかもしれない。もらった認識票を大事に持っているくらいだから、ジャッキーにとっては忘れえぬ出来事であったことは違いないと思うから。
二人の恋の始まりは、唐突にも思えますが、母を亡くし孤独なジャッキーにとってはジャックの優しさは、心に奥にそっと触れてくるモノだったのかもしれません。
1992年、2007年。
別々の時を生きる二人の逢瀬の時間は短い。
「いつまでいられるの?」
「わからない。」
恋人同士が交わすには切ない会話。いつ過去に引き戻されるかわからない。次にいつ現れるかわからないジャックを未来で待つジャッキー。ジャックは未来へ飛ぶために、精神異常を装う。
拘束衣を着れば、愛する女性に会うことができる。それに、これからジャックに訪れる死を回避するためにも未来に行く必要があったのです。「治療」を続ければ死ぬ可能性があったけれど、そんなことはどうでもいい。だってキミに会いたいから。一緒にいたいから。
ここで驚きポイントその2
精神病院の入院患者のルーディを演じるのがダニエル・クレイグ。
妻を30回も殺す計画を立てたという異常者…。
これは最初に見た時に全然気が付かなかった…。というか、ダニエル・クレイグをまだ知らなかったのです…。私が彼を知るのは『カジノ・ロワイヤル』だから。
さらに驚きポイントその3
ジャックの矯正治療を施す病院スタッフの一人がベイツさん。(※『ダウントン・アビー』)
伯爵様の従者が何してんの!!
その他、病院に勤める女医ロレンソンをジェニファー・ジェイソン・リーが演じているなど、脇役陣も何気に豪華なんです…。
ロレンソン医師は極悪な環境の病院においては唯一良心的な女医さんで、本作でも重要な役割を果たすことになります。
▼ジェニファー・ジェイソン・リーの怪演が光る、1990年代のヒット作
愛する女性のために
この映画の好きなところは、何といっても自分のことを差し置いて好きな女性の幸せを願うところ。
自分が死ぬ日が迫るなか、ジャックは1992年のジーンとジャッキーを訪ね、ジーンに手紙を託す。それは親子の幸せのために、未来を変えるためのジャックからのメッセージ。
そして頭部に重傷を負い、瀕死の状態で拘束衣を着せられたジャックは最後のタイムスリップに挑む。
2007年。
ダイナーから出てきたジャッキーは以前とはまるで違う柔らかい雰囲気を纏っており、かつての暗く荒んだ表情はみじんもない。彼女の未来が変わったことをひと目で理解したジャックは嬉しそうに笑う。
初めて出会った日とおなじように寒空に佇むジャックを見て、放っておけないと思ったのか車に乗せてくれるジャッキー。
病院勤めをしていると笑顔で語るジャッキーは楽しげに母親のジーンと電話で話している。その幸せそうな姿を見て、ジャックは嬉しそうに微笑み、温かい光が二人を包み込んだところでお話は終わります。
ジャッキーを見つめるジャックの眼差しが優しくて(頭から流血はしていて大変な状況なのですけれども…)キミが幸せならそれでいい、その笑顔がそう言っているように見えて、涙が出たのです。
タイムスリップ?それとも…。
『バタフライエフェクト』と似ていると言われることが多く、かつ比べて落とされることが多い作品です。確かに比較すると甘さが目立ちます。
なぜジャケットを着るとタイムスリップするのか、という理由も仕組みも曖昧で説明はありません。ただルーディも同じ治療を受けて未来を見たらしい、ということがほのめかされるので、ジャックが「幻覚」を観たわけではないらしい、ということはわかる。
今回、2度目の鑑賞でこの作品は単なるタイムスリップものではないのではないか?と思いました。
ジーンに手紙を渡した後、ジャックが転倒して頭を怪我する瞬間に重ねられたイラクの少年に撃たれるシーンのフラッシュバック。
イラクでジャックを撃った少年と、現在に生きるロレンソン医師の患者ババック少年の外見がそっくりで同一人物に見えたのです。気になって調べたら同じ子役が演じているではないですか…。
ジャックの致命傷となった転倒して怪我=撃たれて怪我…?
もしかしてイラクで撃たれた時に彼は死んだのではないか?
これまでの物語は瀕死の彼が見た、束の間の夢だったのではないかと…。
単に出演シーンが少ないから子役を使い回した可能性もなきしもあらずなのですが、今まで観てきたものはジャックの夢だったのかもしれません。(えー、まさかの夢オチ…?)
それから警官殺しの犯人が指に巻きついた紐をぐるぐる回しているシーンが挿入されましたが、あの紐がジャックが認識票をリュックに結びついけていた紐にそっくりなんですよね…。完全に同一の物かまでは断定しかねますが、調べてみたら同じように考えた人もちらほらいるみたい。
ジャックはイラクで少年に手を差し伸べようとして撃たれた優しい青年でした。救いたい、助けたい、そんな思いが見せた夢だったのかな。
もしもすべてが夢だとしても、ジャッキーとジーンにはこの世に存在してほしいかな。ジャックの夢と親子の現実が少しだけ交わった。そして奇跡が起こった。そうであったらいいな、と思いました。
もしかしてジャッキーはジャックを待っていた?
私はここまで考えが至らなかったのですが、ジャックを見てジャッキーが笑っていたのは、もしかして母親のジーンからジャックの話を聞いていたからではいないか…と指摘されている方がいました。鋭いなぁ。確かにありえます(゚ー゚)(。_。)ウンウン
ジャッキーはジャックが過去から自分の時代にやって来るのを待っていたのかもしれません。
もしもそうなら、ラストに聞こえた「あと何時間あるの?」というジャッキーの問いかけは回想ではなく、ラストシーンに実際に発した問いであった、とも言えそうです。
結末の解釈を見る側にゆだねる作品。
私はこの作品が残す優しい余韻がとても好きです。
ブラッド・レンフロのこと。
5000人の候補の中から『依頼人』で家族を守ろうとする健気な少年の役を獲得し、『スリーパーズ』『マイフレンドフォーエバー』数々の名作に出演し、日本ではテレビCMにも出演するほどの人気と実力を備えた天才子役…。
残念ながら、もうこの世にはいません…。
2008年にヘロインの過剰摂取で25才の若さでこの世を去りました。
彼の訃報を知った時のショックは今も覚えています。
以上、『ジャケット』の感想でした。
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