戦争から戻ってきた夫は、別人のように変わってしまっていました。
『ある愛の風景』
基本情報
監督:スサンネ・ビア
出演:コニー・ニールセン/ウルリク・トムセン/ニコライ・リー・コス
製作:2004年/デンマーク
監督のスサンネ・ビアはデンマークを代表する女性監督で、2010年には『未来を生きる君たちへ』でアカデミー外国語賞を受賞しています。
あらすじ
優等生の兄ミカエル。一方の弟のヤニックは高校を中退し定職にもつかず刑務所で服役していたこともあり、家族からは孤立していた。
軍人のミカエルは、アフガニスタンに派遣されるが、そこで乗っていたヘリが撃墜された。妻のサラにはミカエルの死が伝えられ、サラと二人の娘たちは悲しみに暮れる。
寂しさと悲しみに打ちひしがれ慰めあううちに、ヤニックとサラたちの間に絆が生まれ始めたが…。
そんなとき、ミカエルが生きていたことがわかる。
ミカエルは敵の捕虜になっていたのだった。生還を喜ぶサラたちだったが、ミカエルはヤニックとサラの仲を疑ったり、暴力的になるなど、別人のように変わってしまっていた。
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感想(ネタバレあり)
人格者であったはずの夫の変化
ミカエルは人間的にも優れた人でよい夫であり、よい父親であり、よい息子であった。
問題ばかり起こして、両親とも上手く行っていない弟ヤニックの数少ない理解者でもある。軍人としても優秀で敵の捕虜になっても勇敢で理性的であろうと努めていることがわかる。
だからこそ。
彼の取ってしまった行動が辛い。
しかしあの状況で、他の選択肢があったのだろうか?
他の行動を取ることができる人間がどれほどいるのだろうか?
彼を非難することは誰にもできない。
同僚に打ち明けようとするも、できず。
家族に打ち明けることもできず、一人で苦しむことしかできないミカエル。
犯した罪ゆえに、家族の前に堂々と立つこともできなくなってしまったミカエルには、自分の不在時に自分の家族と新しく絆を結んだ弟を観るのは苦しかっただろう。
家族とともにありたくて、罪を犯したのに。
その罪ゆえに、家族と溝ができてゆく。
時間は戻せないから。
起きてしまったことはなかったことにはできない。
以前のようには生きては行くことはできない。
夫婦の絆。
これから先の人生でヤニックが背負い続けるものが大きすぎて、見終わった後も何とも言えない重苦しさを感じました。
それでも夫を強く抱きしめるサラの表情を見ると、この人は夫の罪も一緒に背負うつもりなのだな、と思いました。
出演者とハリウッド・リメイク版について
出演者がデンマークの方ですが顔に見覚えがあり、気になって調べたところそれぞれアメリカ映画にも出演しているみたいです。みなさんとても演技上手で、見ごたえがありました。
特にサラが夫を失った寂しさを抱えて、ベッドで何度も寝返りを打つシーンが印象的でした。綺麗な人だなぁ…。
ハリウッドでリメイクされています。
タイトルは『マイ・ブラザー』
ナタリー・ポートマンが本作でサラにあたる役どころ、二人の娘を持つ母親を演じています。
以上、『ある愛の風景』の感想でした。
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