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『エヴァの告白』/ただ、生きようとした。それが罪だとしても。

今日の映画は『エヴァの告白』

マリオン・コティヤール主演の、シリアスな内容のお話。

愛用歴6年以上の動画配信サービス『Hulu』で配信されて見放題になっていたので、Huluで鑑賞しました。

日本公開時のコピーは

「祈りは叶わず、希望はつぶされ、愛に裏切られ、ただ生きようとした。それが、罪ですか?」

まさにそんな雰囲気の作品で、ただ健気に生きようとしている女性がひどい目に合わされるという…。マリオン・コティヤールのはかなげな雰囲気とマッチしてお気に入りの作品。ホアキン・フェニックスの屈折ぶりも◎

本作、近所のレンタルショップではなぜか「エロティックサスペンス」に分類されていました。『氷の微笑』『硝子の塔』と並んで。絶対間違ってると思うんだ。

『エヴァの告白』

基本情報

監督:ジェームズ・グレイ
出演:マリオン・コティヤール/ホアキン・フェニックス
製作:2013年/アメリカ

2013年第66回カンヌ映画祭でパルムドールを争いました。

ざっとあらすじなど。

エヴァとマグダの姉妹は戦争から逃れて、ポーランドからアメリカに移民としてやってきた。しかしニューヨーク到着後、マグダは肺病と診断され隔離されることになってしまい、二人は離れ離れになってしまう。

エヴァの入国審査もスムーズにはいかない。審査書類の不備や身に覚えのない素行不良などの指摘を受け、入国を拒否されてしまう。

途方にくれるエヴァの前に、ブルーノという謎の男が現れる。

ブルーノが手を回してくれたおかげで強制送還を免れたエヴァだったが、ブルーノは移民の女たちに売春をさせて荒稼ぎしている男だった。

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感想(ネタバレあり)

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The Immigrant (2013) – IMDb

エヴァを演じるマリオン・コティヤールが美しさが際立つ。

幸薄く、次々に過酷な試練に襲われながらも、神を信じ続け己の誇りを失うまいとする凛とした強くて気高い女性を演じています。どことなくはかなさを感じさせるマリオンの容姿がエヴァにぴったりだ。

そして、ブルーノ演じるホアキン・フェニックスの屈折ぶりがすごい(笑)

エヴァのことを愛している。だから優しくする。

かと思えばその一方で極悪非道なことも平気でやり容赦なくエヴァにも売春をさせるし、突然ブチ切れもする。

先ほどまで優しかった男がなぜ別人のように急変し、自分を傷つけるのか、エヴァの戸惑いが画面から伝わってくる。極悪非道かと思えば、次の瞬間には反省し、また優しくなる。その繰り返し。

ブルーノは実に面倒くさい男なのですが、エヴァはこの町では一人で生きていくことができない。ブルーノの言うことを聞かなければ、ポーランドへ送還されてしまうし、それではマグダの病気が治った時にマグダが一人ぼっちになってしまう。

何よりも病気のマグダのためにはお金を稼がねばならず、稼ぐためには体を売るしかない。八方ふさがりの、生きるにはそうするしかない状況で、彼女は罪を犯し続けるしかない。

ただ、生きたい。

ただ、生きようと思った。

たとえそれが罪だとしても。

エヴァはどれほど振り回され傷つけられても、ブルーノのそばにいるしかない。

現代の価値観ではエヴァのように追い込まれ、ただ一方的に食い物にされる女性を「罪を犯した」という理由で責めることは抵抗があります。が、この時代の価値観ではやはり彼女は罪深き存在なのです。

監督・脚本のジェームズ・グレイはエヴァとブルーノはこの二人に当て書きしたらしい。これは納得。本当にぴったりの二人でした。

画像2http://eiga.com/movie/79543/

エヴァと親しくなる、奇術師のオーランドが登場します。演じているのは『ボーン・レガシー』『ザ・タウン』のジェレミー・レナー

エヴァとオーランドが距離を縮めてゆく過程は、ほほえましくて、エヴァもようやく幸せになれるのかなと思ったら・・・。やはりそんなに甘くない。

オーランドは優しく気さくな男かと思いきや、過去にブルーノの恋人を奪ったり、トラブルを多数引き起こした経験を持つ問題児であるらしい。

確かにエヴァへの接し方が手馴れてるなぁという感じはしましたが…。

やがてオーランドとエヴァの関係は、さらに彼女を絶望の底に突き落とす事件を引き起こします。

なぜ、これほどまでに過酷な運命を神はエヴァに与えるのか。

神様を恨みたくなるような悲惨な境遇に落とされても、エヴァの信仰は決して揺らぐことがないのです。

ブルーノは最終的にエヴァに「自分の犯した罪」を告白し、告白を聞いたエヴァは彼を許します。まるで聖母のように、清らかな心を持つエヴァは自分をこの苦境に落とした張本人を許して、抱きしめる。

画像1http://eiga.com/movie/79543/gallery/2/

エヴァとマグダの去ってゆく後姿を、見つめるブルーノ。

静かで美しい余韻の残る、よいラストシーンでした。

それにしてもマリオン・コティヤールは薄幸な女性の役が似合いすぎるなぁ。幸せな役どころを演じている作品があまり思い浮かびません…。本作もとても暗い展開の作品なので、観ていると辛くなります。

しかしエヴァの決して汚すことの出来ない静かで澄んだ空気をまとった佇まいは、どれほどの絶望の底に落とされても変わることはありませんでした。

以上、『エヴァの告白』の感想でした。

▼『ブルックリン』エヴァと同じ移民の少女を主人公にした作品

『ブルックリン』ではシアーシャ・ローナンがアイルランドからの移民の少女を演じていました。 この作品の主人公は受け入れ先もしっかりしており、海を渡って新天地で幸せになりましたが、きっとエヴァのように新天地で地獄を見た女性も当時多かったのでしょうね。

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